2014年9月22日追記:Wireless wireのページで、この実践が失敗例として紹介されていますが、enchantMOONの失敗例ではありません。MOONBlockの実践です。もしも我が校にenchantMOONが数多く導入されていたら、また違う結果になったはずです。悪しからず。
UEI様より、MOONBlockの本と、enchantMOONが1月に学校に送られてきてから、PCクラブの活動としてMOONBlockに取り組んでみました。今回は、その総括としてこのエントリーを書きます。続きと銘打っておきながら二回目ではなく、まとめになってしまいます。
なお、クラブ活動はあくまでも、自主的な活動が本来メインです。子どもたちの興味関心に沿った運営が求められます。なので、私も「絶対MOONBlockをやるように。」とは言っていません。飽きられたら、それはそれで、MOONBlockの限界かな、と思いましたので。
当然ですが、以下の内容は私の個人としての考えです。教員全体の姿勢を示すものではありませんし、どちらかというと私は教員の中でも変なことをやっているタイプなので、主流の考え方でない可能性の方が高いです。ご理解ください。
それと、UEI様には申し訳ないのですが、率直な意見を書きます。いろいろ送ってもらっていながら、普通に「遅い」とか書きますので、ご了承ください。
MOONBlockのまとめ
- マウス操作だと面倒
- 子どもたちはフルスクリーンでやりたいみたい
- 楽しいみたい
- 保存の仕方がネック
- 思考を思った通りに表せないみたい
- 教員サイドから見たMOONBlock
マウス操作だと面倒だという点について
面倒というか、独特の操作体系に初めは戸惑う子、多かったです。特に、数値指定のくるくる回すもの。enchantMOONではおなじみなのですが、子どもたち、はじめ、回して指定することを理解するのに時間がかかっていました。また、マウスを使った操作の場合、子どもたちはマウスを使ってくるくる回すのに慣れていないと、腕全体を使って回すので、すごく目立ちます。笑
フルスクリーンでやりたいみたい
コンピュータ室には、Vistaのシンクライアント機が導入されています。基本的に、PC上にはいくらデータを保存しても、再起動すると全部消えてリセットされます。
また、教員側から全てのパソコンの画面を一覧で把握し、適宜操作をフックして手助けすることも可能です。全てのWeb閲覧データはログに残され、教師用端末からログの検索も可能です。
そんな中、子どもたちの画面をモニターしていて思ったのは、右上に出るプレビューでは満足できず、毎回フルスクリーンにしている子が多かったということ。要するに、自分の成果物への関心はすごく高いということです。
自分で作ったプログラムが、形として現れる。更には、友だちと「俺はこうしたぜ」とか、「え、それすごいじゃん、どうやった?」なんていう会話が起きる。ここは見ているこちらも楽しかった。可能であれば、RUNボタンを押したときに毎回フルスクリーンになるようなオプションがあれば、子どもたちも喜ぶ気がします。
楽しいみたい
MOONBlockへの取り組みは、教師用端末からChromeを全PCで立ち上げ、MOONBlockのサイトアドレスを全PCに飛ばすことからスタートします。逆に言うと、それ以上の手助けはしないようにしましたし、興味が無いならScratchやプログラミンに取り組んでもよい環境でした。ところが、大抵の子はMOONBlockをそのまま続けています。じゃあ、仮にブラウザだけ立ち上げて、好きなサイトを選べ(アドレスを送らない)となったらどのツールを選択するか。一位はMOONBlockでした。二位はプログラミン。三位はブラウザを閉じて、アクションエディタを起動していました。楽しいみたいです。
保存の仕方がネック
慣れだと思うのですが、コードをコピーして、メモ帳に貼り付け、NASに保存の流れは結構大変だったようです。なんでだろう。サーバー上で保存して、「ひみつの暗号」みたいな、ドラクエの復活の呪文みたいな方法の方が楽しいかもしれません。編集用とシェア用で二種類表示しておけば、友だちに遊ばせるのも楽ちんです。
思考を思った通りに表せないみたい
これはちょっとネックです。「この敵が倒されたら、音が出て、2秒後に消える」とか、「この敵が倒されたら、色が変わって、移動速度が速くなる」とか、結構面白いアイデアは出ているのですが、それをどのように再現するのか、子どもたちの中で解を見つけられずに、諦めるパターンが多かったです。MOONBlockは、Scratchのようで、Scratchよりも世話焼きです。要するに、必要そうなものはライブラリとしてブロック化されている。逆に、そのブロックから外れたことをしたい場合は、思いっきりハードルが上がります。バランスを取るのは難しと思いますが、子どもたちの思考は柔軟すぎて、既存のブロックでは用意仕切れない部分について、そのブロックの構成要素のレベルまで分解したものがどこかにあれば良いなと思いました。子どもたちは意外とそういう素に近い状態のパーツでも、組んでしまいます。というか、そういう力業をするのが好きです。出現のブロック一つとっても、「たくさん」なんだけど、出る位置は指定したい!とか、移動はするけど、周りは壁にしたいから跳ね返るとか、そういうことができなかったようです。これは、フィールドワークでどのような子どもたちのニーズがあるか調査すると面白いと思います。
教員サイドから見た、MOONBlock
個人的に思ったこととしては、MOONBlockのねらいって何なんだろう、ということを思いました。世の中にある、典型的なゲームについてアルゴリズムの追体験をさせたいのか、JSの入門用としての位置づけなのか、曖昧です。(もしくはそのねらいが分かりづらい)
アルゴリズムの追体験をさせたいのであれば、先ほど言ったようにお節介を焼きすぎですし、JSの入門用としては視覚化されすぎています。もっとどっちかに舵を切ってしまえばいいのに、と思います。MOONBlock eduみたいな、アルゴリズムの追体験用サイトを作って、既存のサイトはもう少し難易度を上げてしまうのもアリかなと思います。
そのねらいがはっきりすると、教育課程のどの場面に位置づけるのかも明確になります。アルゴリズムの追体験であれば、マウス操作に慣れる体験と絡めて低学年から入れることもできるでしょう。JSをガシガシ書かせたいのであれば、残念ですが小学校としては全員に向けて取り入れることはできず、クラブでの採用にとどまるでしょう。
enchantMOONのまとめ
- 使いこなせない
- 遅い
- 持ち帰りたいのに持ち帰れない
- 教育現場で使えるかどうか
使いこなせない
すみません、子どもには使いこなせないみたいです。と言うのも、子どもたち、AndroidやiOSの操作体系、家でマスターしちゃってます。この前、「せんせ、ぼくも5s買ってもらった」って言われました。Oh・・・。
遅い
子どもたち、レスポンスがないと「処理中だ」と思うよりも先に「壊れた」とか「フリーズした」って考えます。申し訳ないのですが、子どもたちが壊れたとか、フリーズしたというような表現を使うくらい遅いです。
持ち帰りたいのに持ち帰れない
ここから、少し思想の話になりますが。
個人的に、タブレット端末が紙の代替として作用するかというのは、子どもたちが雑に扱ってもどうにかなるか、にかかっていると思います。変な話をしますが、タブレット端末が「高級品」だとか、「壊れたら怒られるもの」として存在する限り、紙の代替にはなりません。今回、学校にenchantMOONが送られてきました。子どもたちに使わせたいので、(言い方は悪いですが)「壊れてしまってもいい。誰か持って帰りたい人いる?」って聞きますよね、そうすると、手を挙げたいけれども、ためらう人がいます。理由を聞くと、「だって、壊すと怒られちゃう。」とか、「親に見つかったら怒られる。」って返ってきます。(その感覚が悪いというわけではないのですが。)1人だけ持って帰りましたが、こそこそ隠しながら使ったようです。(ちなみに、残されたノートを見た結果、上のつかいこなせない、が結論として出てきます)
私の教室には、壊れてもいいという考えで、インクジェットの複合機が置いてあります。それとデジカメも。ルールを守れば子どもたちも使えます。(著作権、肖像権の問題と、先生のお小遣いで買ったので無駄遣いはやめてね、程度ですが)意外にも、チョークの粉舞い散る劣悪な状況下でも壊れません。Brother、やるな。
そうすると何が起きるか。係活動で「写真コンテスト」が開催されます。おもしろ写真が教室を飾ります。話し合いの記録を残すのに、ノートと並行してデジカメで撮影するようになります。「ここまで書いたけど後まだだから撮ってー。」
子どもたちのできることがひろがっていきます。本来、道具ってそういうものだと思います。使って怒られるとか、見つかったら注意されるとか、それは道具としての前提条件を満たしていません。
タブレットを紙の代替として使う。その未来は遠いです。子どもが自由に使えないんですから。
教育現場で使えるかどうか
タブレット端末については教育業界でも大変に興味深い事象となっていますが、格安のAndroidタブレットを選んだ市もあれば、そこそこハイスペックなWindowsタブレットを選択したところもあります。どちらがいいのか、注意深く見守っていきたいと思います。
私としては、「壊れても大丈夫。」という条件をまず一番に挙げておきたいです。おそらく両方とも、壊れても保障が使える契約になっているはずですが、その安心があるかどうかで親の対応も異なるでしょう。
さて、その点でenchantMOONを考えると、もとより高かったですが、更に上げるという判断です。保守契約もおそらくない。まず、学校で採用したいと思うところはないでしょう。もとより、教育現場で求めているタブレットと思想がちがいますから、価格の問題ではないでしょうが、いずれにしても残念な流れです。よって、enchantMOONを学校で使うのは、越えるべきハードルがいっぱいあるので大変だと思います。また、教員側としても、enchantMOONを使うタイミングはなかったです。届いた日にいろいろ触ってみましたが、私のスタイルには入り込む余地がなかったです。申し訳ないです。
まとめ
未来を感じさせるMOONBlockとenchantMOONには最大限の敬意を表したいです。理想に向かって突き進んでいくUEI様には、かっこよさを感じます。尊敬します。
ただ、大人が思っているワクワクする未来と、子どもが作り出すワクワクする未来には、きっと違いがあるでしょう。だから、今の大人たちが本当にすべきなのは、子どもたちが柔軟に使いこなせる道具と、その道具を適切に使用できる権限を渡すことです。道具はUEI様が作っていけますが、権限を渡すのは社会の役割です。
そして、子どもたちの失敗を温かく見守り、うまくいったことを一緒に喜んでいく、余裕のある大人の姿勢は、子どもたちの思考、やりたいこと、夢をどんどん広げていくでしょう。
「月に行きたい。」 って単純に思ったことを、「いやいや、無理だ。それよりももっとやるべき事があるだろ。」って大人の都合で解釈し、押しつけてしまっていたら、人類はいつになっても月に行けなかった。だからこそ、大人が思う、「今無理なこと」にも果敢に挑戦させることが必要なんです。そうすれば、いつかは「今できること」に変わります。
enchantMOONが目指す、「今無理なこと」が、「できること」に変わる瞬間を、ワクワクしながら、教育という現場から支えて行ければ、これ以上無い幸せです。PCクラブは異動がなければ来年度ももつ可能性が高いですので、何か取り組んでみて欲しいことがありましたら、はてブのコメントなどでお知らせください。
長文につきあっていただき、ありがとうございました。
コメント
[…] 今回僕が出会った記事は次の記事です。 http://edunote.jp/2014/01/27/moonblock-1/ http://edunote.jp/2014/03/16/pcclub/ […]